10年目の結婚

母へのカミングアウト③

その前の年に、一つ上の兄が結婚した。

母は、地元で強力な仲人チームを結成し、兄のお嫁さん探しをライフワークにしていた時期があり、兄の結婚を人一倍喜んだ。(結局、仲人チームの力は及ばず、就職先の名古屋でいい人に巡り合えたので、息子にとって迷惑極まりない母のライフワークは無駄に終わった。)

そして、そのライフワークの矛先はいずれ自分に向かうと覚悟していた。

母は家の中の物色を終えると、少し広くなったキッチンで夜ごはんを作り始めた。その間、いつも以上のペースでお酒を飲ますにはいられなかった。

「今じゃない、今じゃない」

夜ごはんを待っている時も、食べているときも、ずっと頭の中をぐるぐる回っていた。

少し酔いも回り始めたころ、会話は兄の結婚の話になった。

兄の結婚式が、名古屋に割には相当地味だったこと。

結婚式で、あんなに幸せそうな兄を見たことはなかったこと。

結局は自分で見つけたお嫁さんが一番だということ。

 

思えば、今までもずっと色んな話をしてきた母と息子。

なぜ肝心の自分の事が言えないのか・・。

「***(兄の名前)は結婚して幸せになるタイプやけど、だからと言ってSojiは結婚しなくもてもええのよ。」

母は、急にぽろっと言った。

母の意図が良くわからなかったが、反射的に僕はこう言い返した。

「そっか。でも、俺かって将来は結婚したいと思ってるねんで。」

一瞬、間があって、そういう人がいるのか?と聞かれた。

 

「おらんことはない。でも、普通の結婚ではないかもしれん。」

「普通の結婚」。。。。。って何なのだろうか。自分でもそう言って、不思議に思えた。

 

「そっか、Sojiは将来結婚したいと思っている。でも、その人との結婚は普通ではない。。。」

 

母は、独り言のように呟いて、信じられないような言葉を放った。

 

「Sojiの付き合っている人は。。。北朝鮮の人なの?」

 

あり得ないくらい真顔だった。ウケ狙いとは思えないほどの。

肩透かしを食らう僕。「い、いや。北朝鮮ではない。。」

 

「そっか、じゃあどう言う事?」

 

母は真顔だった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

そこから先のあと一歩。あと一歩を結局は自分から進めることはできなかった。

 

思えば、小さいころからいつも最後は母に助けられていた。

 

夫婦喧嘩に耐えられなくなり、家を抜け出し近所の本屋さんに逃げ込んだ時。

家族旅行はいつも、わがままにすねて周りに迷惑をかけていた時。

大学時代、些細な事で喧嘩をし、母からの電話を全て無視していた時。

 

決まって、最後は母から歩み寄って手を差し伸べてくれた。

 

沈黙が続いた。そして、僕は母の事を直視できなくなっていた。

話題を変えないと。といつもの防衛本能が働く。「今じゃない、今じゃない」

 

「同性が好きなの?」

 

ストレートすぎる質問だった。

 

そして、僕は返事もできないまま崩れ落ちるように泣いた。それが僕の十分すぎる答えだった。

(写真は、その当時描いていた10か年計画。2015年の目標であったカミングアウトが達成され、

名前に謎の英語ミドルネームが入ってますが、100%純粋な日本人です。京都出身で、現在は湘南エリアにアメリカ人のパートナーと愛犬さし美と暮らしています。

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