10年目の結婚

母へのカミングアウト④

後になって母にその当時の話をすると、母の記憶は少し違っているようだった。特に北朝鮮のくだりは身に覚えがないらしいが、こんな話作れる訳がない。録音しておけばよかった。

告白の後、僕は犬と散歩に行くと夜中に一人家を出て、近所の海岸に向かった。友人そしてMikeにとりあえずの報告をし、夜の海を見ながらようやく少し冷静に、母との会話を思い出すことができた。

さんざん泣いた後、謝り続ける僕にこう話しはじめた。

「Sojiが勇気を出して話してくれてよかった。何も悪いことをしているんじゃないだから、謝る必要はないの。」

「人間60歳も年を取ると、色んな事に対していい意味で多くを求めなくなる。息子が元気でいてくれたらそれでいい。50歳だったら、Mikeの事を知らんかったら、もしかしたら違う反応をしていたかもしれんわ。」

黙って頷く事しかできなかった。

深夜になって家に帰ると、食器が片付けられていて、母は既に自分の部屋に戻っているようだった。部屋の明かりがついているか確認するのが怖くて、僕はそのままベットに倒れこんだ。

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深い深い井戸に本当の自分を沈め、蓋の上に重石を置いて閉じ込める。もう一人の自分が、番人として緊張を隠し、ポーカーフェイスでその蓋を守っている。間違って蓋が空いてしまうと、重石が落下してつぶされてしまう。僕は生きるための本能で蓋を抑え続ける。

暗くて狭い井戸の中。最初は孤独でいたたまれない気持ちになったが、それにもすぐに慣れた。

井戸生活と番人の二重生活が長いあいだ続いた。井戸の中の僕は心も体も大人になり、幾分窮屈になっていた。好奇心が芽生え井戸の外に出てみたいと思う気持ちが強くなった。

番人にそう伝えると、きまって重石の話をされた。そのたびに、見えない重石の恐怖が外への欲求に勝った。

ある日、その日もいつも通り天井を見上げていると、蓋がぎしぎしと動いている。一筋の光が差し込む。

そして、その蓋は音を立てて、容赦なく外された。まるで、朝のベットからなかなか起きようとしない子供の布団をはぎ取るように。容赦なく。大胆に。

僕は、咄嗟に目をつぶり、頭を抱え込むように身構えた。反射的に、本能的に。

 

「つぶされる。」

 

震えながら、時を待った。何度も見ていた悪夢が、今回も夢であることを必死に祈った。

 

・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

いつまでたっても、何も落ちてこない。恐る恐る目を開け、天井を見上げてみる。

 

そこには、青い空が見えた。

 

恐る恐る這いあがってみると、外された蓋、その上には重石ではなく花が咲いていた。

 

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自然と目が覚め、ベットで茫然としていた。昨夜あったことが決して夢ではないという確信。そして、今まで感じたことがないような、解放感がそこにはあった。

「朝ごはん、できたわよー。」

いつもの何も変わらない朝がそこにはあった。

僕は一体、こんなにも長い間何におびえていたのだろうか?

 

これが、僕のカミングアウトストーリーだ。

写真は、当初計画していた僕の10年計画。「カミングアウト」にマークをした瞬間、やっとスタート地点に立てたような気がした。

名前に謎の英語ミドルネームが入ってますが、100%純粋な日本人です。京都出身で、現在は湘南エリアにアメリカ人のパートナーと愛犬さし美と暮らしています。

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