結核隔離入院ダイアリー

最後の晩餐、荒れた前夜

隔離入院宣告の電話を切り、僕はまさにうろたえた。6ヵ月の薬生活&禁酒は覚悟決めたけど、一か月入院、それも隔離という事実をそう簡単に飲み込めるわけがない。

不安、焦り、悲しみ、そして怒り、色々な感情が一気に湧き上がる。そして、悔しくて泣いた。本当に久しぶりに悔しくて泣いた。

とりあえず、母に電話した。

「今朝の検査の結果で、急に入院が決まった。それも一か月。隔離。」

言葉に出していく、どんどん現実味を帯びていく。そう、これは実際に自分に起こっていることだった。母は、とにかくお医者さんの言う事を聞きなさいと言った。

そして帰宅。ぐしゃぐしゃの顔でどこにも行く気力もなかった。そんな自分にマイクはこう言った。

「明日からどうなるかわからないけど、とりあえず美味しいご飯を食べに行こう。」

そして僕たちは近所のお気に入りのイタリアンに向かった。

3週間の海外出張お疲れ会と6ヵ月の薬生活の最後の晩餐となるはずだった夕食は、1か月の隔離入院の前夜祭に変わった。

お店のオーナー夫婦は、いつもは週末に来る2人を不思議に思いながらも暖かく迎えてくれた。正直に明日から入院する旨を涙目で伝えても、何ら変わらない笑顔だったことに幾分救われた気がした。

IMG_4756

夕食後、僕たちは「どう一か月の隔離入院を乗り切るか」ではなく、「いかに、隔離入院ではなく自宅隔離に切り替えられるか。」を話し合った。はい、わかりました。一か月入院頑張ります。とはすぐ納得できなかった。

マイクは、そういう時のリサーチ力が半端なくて、色々な事例を国内外からネットで調べてくれた。一方、僕はネットで溢れかえる本当かどうかわからないような情報に絶望していた。

「当初は一か月と聞いていたのに、もう半年も入院している。」

「夜は、同室の患者の咳やくしゃみで全然寝れない。」

その日、深夜まで話し合った結果。マイクは翌日から予定し、すごく楽しみにしていたシンガポール出張をキャンセルし、僕は翌日の10時から病院に行く予定を勝手にキャンセルした。

自宅療養で、隔離入院と同じ環境を作り、ストレスを無くして、病気と闘っていく。僕はこの可能性にかけ、明日保健師にその旨を伝えることにして、やっと少し眠ることができた。

翌日その願いはあっけなく粉々に打ち砕かれることになる。

すっかり病院に行っていると思っていた保健師は、僕の決断を聞いて冷静にこう答えた。

「法律で決められているのよ。淡の検査で陽性が出た時点で、隔離入院が必要になります。」

おそらくそういった対応に慣れているのであろう。

あーそうですか。だったら仕方ないですね。。。という反応にも慣れているのかもしれない。でも、僕たち連合軍は違った。海外の事例、隔離入院がもたらすストレス、せめて個室 etc、最後まで食い下がった。背後から「すぐにあきらめるな」とマイクにしては珍しくアメリカ人っぽかった。

結局、白い巨塔には勝てなかった。

荷物をまとめ、最後にこれでもかってくらい体に悪いけど美味しいランチを食べ、海岸をマイクとさし美と散歩した。この景色を最低でも一か月は見ることができないんだと思うと、情けなくて泣けてくる。

↓本当に最後の家ご飯。

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そして、僕は覚悟を決められないまま、神奈川県の丘の上に佇む循環器センターの隔離病棟に入院することになった。

結核患者の数は、驚く事に増えているみたいだ。薬で治る病気ではあるが、場合によっては僕みたいに隔離入院を余儀なくされる場合もある。そして、今後海外との接点が多くなるにつれ、高年齢者だけではなく、僕みたいに30代後半から若い世代にとっても無視できない病気になる可能性は多いと思う。

このブログを通じて、この体験を通じて感じたこと、考えたことを記録することによって、自分だけれはなく、同じ立場の人にとっても何かプラスになれたらと思う。

TOP画面は、塀の中に入る前の最後の家族写真。

名前に謎の英語ミドルネームが入ってますが、100%純粋な日本人です。京都出身で、現在は湘南エリアにアメリカ人のパートナーと愛犬さし美と暮らしています。

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